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執筆者 | 戴 二彪 |
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発行年月 | 2020年 3月 |
No. | 2020-05 |
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近年の日本では,観光立国戦略の推進に伴い,ホテルなど宿泊施設の建設ブームが起きている。しかし,施設タイプや地域によって状況が若干違うが,外国人観光客向けの宿泊施設の経営パフォーマンスは必ずしも期待したほど楽観できるものではない。合理的な宿泊施設投資戦略・経営戦略を策定するためには,訪日外国人客の旅行行動(特に宿泊施設選択行動)の特徴と影響要因を正しく認識する必要がある。本研究では,国土交通省の「訪日外国人消費動向調査」や「宿泊旅行統計」など統計データおよび訪問調査に基づいて,訪日外国人客の宿泊施設選択行動の国(地域)別特徴と変化を考察した。さらに,「一人当たり一泊宿泊費」を宿泊施設選択行動の特徴を総合的に反映する指標とみなして,2014~2018年の18の国(地域)からの訪日客宿泊行動に関するパネルデータを用いて同指標に対する影響要因を検証した。分析結果によると,訪日外国人客の国別一人当たり一泊宿泊費は,注目されている一人当たり買物代と大きく違って,基本的に出身国の平均所得水準に左右されている。所得水準要因のほか,訪問目的や旅行客属性及び宿泊文化などの要因も影響しているとみられている。本研究の結果は,今後日本各地の宿泊施設投資戦略・経営戦略を策定する際に,訪日外国人客の国別構成・属性構成の変化と主要訪日国の所得水準の動向を確認したうえ,慎重に検討する必要がある,と示唆している。