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執筆者 | 坂本 博 |
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発行年月 | 2009年 1月 |
No. | 2009-02 |
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本研究は,改革開放後の中国の31省の省間所得格差について,2004年の経済センサスに基づく改訂後のマクロデータを用いて所得分配構造を再計測した上で,所得分配構造の変化を検証したものである。
改訂後のデータを用いた場合でも省間所得格差は拡大傾向となり,所得分配構造は2極分化となる傾向を持つことが判明した。特にこの傾向は1993年ごろから顕著に見られる。これは,ちょうど鄧小平が南巡講話をしたあとで,「社会主義市場経済」路線が確定し,改革開放政策が一気に加速した時期とちょうど一致する。
一方,このデータによるマルコフ連鎖を用いた収束分布の計測においては,貧しい所得階層に分布が集中する形で,弱い2極分化構造となっている。とはいえ,2極分化の結果が引き続き見られることから,中国の省間所得格差は,格差の拡大といった問題をしばらく抱えることになるだろう。