刊行物
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執筆者 | 長谷川 純一 |
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発行年月 | 2008年 12月 |
No. | 2008-29 |
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途上国の長期的成長において技術変化が果たす役割が大きいが,どのように技術変化が起こるのかについては,未だ,明らかならざるところが多い。本稿では,日本の江戸期から明治期にかけての製鉄技術を取り上げ,技術変化がどのように起こったのか検証し,途上国の経済発展への示唆を考えてみたい。
そのため次の4点について分析する。第1に,江戸期において,西洋では製鉄技術が大きく変化したが,日本ではほとんど変化しなかった。これは,なぜか。第2に,江戸末期に複数の藩が反射炉の建設に挑戦するが,一部の藩では成功し,他では失敗している。成否を分けたのは,何か。第3に,明治期,官営製鉄所は,釜石と八幡に建設されるが,ともに,初期において大きな失敗をした。当時の計画と失敗の原因を検討することにより,技術変化の特徴について考察する。第4に,これら技術変化の特徴を,より一般化する形で,人的資本,知識水準,ローカリゼーション,試行錯誤の観点から整理する。特に,技術変化を促進する社会の制度について,議論を試みる。