刊行物
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執筆者 | 本台 進 |
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発行年月 | 2007年 12月 |
No. | 2007-27 |
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日本の産業用ロボットの生産は,1980~1990年の10年間に生産額が784億円から5,440億円と約7倍に急速に成長した。しかし,それ以降生産額はほぼ横ばいで,頭打ち傾向が鮮明である。こうした現象から,日本のロボット産業は競争力を失ってしまったのであろうかという疑問が生じ,ロボット産業の構造や市場について分析したのが本稿である。ここ10年間,国内生産はほとんど成長していないが,輸出市場は年率約22%で成長し,逆に国内市場は減少してきた。すなわち,2002年までは国内市場向けのシェアが50%を超えていたが,2003年以降,輸出向けのシェアが国内市場を上回り,2006年には国内市場が40.5%,輸出市場が59.5%となり,輸出市場の重要性が増してきた。
輸出市場を見ると,アジアでは,稼働台数の増加分をやや上回る台数が日本からは購入されていた。これは,産業用ロボットの新規設置だけでなく既存設備の更新においても,他国製から日本製のロボットへの交替が生じていたことを示す。逆に,欧州では,稼働台数の増加分は日本からの輸入台数をはるかに上回るものであった。すなわち,欧州市場においては,稼働台数中に占める日本製産業用ロボットのシェアが次第に低下していることを示している。北米においては,日本からの輸出台数が稼働台数の増加分をわずかに上回る程度であった。
換言すると,アジアでは日本製ロボットの競争力があるが,欧州では市場シェアを失いつつある。なぜ欧州市場で日本メーカーのシェア減少が生じているかを分析するためには,より詳細に現状を調査する必要があろう。その上で,日本メーカーは何をすべきであるかを,技術的側面だけでなく,販売網・サービス網の強化など総合的な対策が必要であると考える。