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産業クラスターの発展ダイナミズム -発展途上地域の観点から-

執筆者 岸本 千佳司
発行年月 2006年 8月
No. 2006-12
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内容紹介

従来の産業クラスター研究は,シリコンバレーやサード・イタリーなど先進地域の「成功例」をモデル化し,「成功要因」を抽出するというアプローチを採ることが多かった。本稿では,むしろ近年蓄積されつつある発展途上国(もしくは途上地域)の事例研究のサーベイに基づき,不成功もしくは未発達のケースとその原因についての分析を整理し,こうした発展途上地域の観点から状況改善のための方策を考察することに重点がある。具体的には,クラスターの企業をめぐる関係を,後方連関(部材・生産財サプライヤーや下請け業者等との関係),水平連関(同業者との関係),前方連関(バイヤー・顧客や貿易商等との関係),支援機関連関(地域産業振興を担う行政部局や各種産業支援機関との関係)の4種に分類し,各々の連関についてクラスターの効果が十全に発揮された状態を文献に基づき想定し,現実のケースの多くがそうなっていない理由とそれに少しでも近づくための方策を探求した。主な発見としては,第1にクラスターの発展にとっての外的リンケージの重要性,とりわけ前方連関において十分な規模と質を有する市場とのリンクを持つことが,他の3つのローカルな連関の発展と相互に刺激しあうこと,第2にクラスターの経済効果を引き出すためには個別企業レベルでの戦略的・継続的投資が不可欠であること,第3にクラスターによるイノベーション・技術学習促進には多様なチャンネルが存在し,連関ごとに考慮すべき課題があるということ,が挙げられた。