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インドネシアにおける通貨危機後の経済改革と貧困対策

執筆者 本台 進
発行年月 2005年 12月
No. 2005-30
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内容紹介

1997~98年の通貨危機によって深刻な打撃を受けたインドネシア政府は,国際機関や諸外国の金融支援を受ける代わりにIMFマクロ経済プログラムの受入に合意した。このプログラムの下で政府が実施した構造改革は,金融システムの改革,国有企業の改革や民営化,民間企業の改革,財政支出の見直し,地方分権化,税制,公共料金制度の改革など多岐にわたっている。こうした改革のうち主要なものを鳥瞰し,貧困世帯へ及ぼす影響を緩和するために採られた対策とその効果について検討する。改革後の貧困対策の特徴は,貧困世帯に対象を限定したプログラムの導入であり,主なものは食糧保障プログラム,教育支援プログラム,保健プログラム,雇用創生プログラムである。しかし,現実の実施段階では,それぞれのプログラムおいて貧困世帯のみが対象とされておらず,多くの富裕層世帯にもプログラムの便益が広くばらまかれている。そのため,貧困対策のための資源が貧困世帯へ集中せず,所得分配是正効果が大きくなっていない。したがって,貧困対策プログラムの効果を上げるためには資源の大きさだけでなく,その実施方法の検討にも重点が置くことが重要である。