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執筆者 | 奥田 英信, 齋藤 純 |
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発行年月 | 2004年 12月 |
No. | 2004-33 |
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本稿では、1990年代以降に大幅な外国銀行の進出が見られたタイとフィリピンについて、外国銀行が地場銀行経営に与えた影響を検討する。1.で先行研究を概観した後、2.と3.でアンケート調査と経営指標の回帰分析を利用してタイの事例を分析する。続いて4.ではタイの分析結果をフィリピンの先行研究と比較する。5.は結論である。タイのアンケート調査結果によれば、外国銀行の進出と共にタイ銀行市場の競争は高まった。また外資合弁銀行では、大幅な経営方針の見直しが行われ、新規商品や新しい経営手法の導入がより積極的に進められている。一方、地場銀行では、経営方針は従来と同様で、新商品導入なども限定的であった。経営指標の回帰分析結果から判断すると、タイでは外資比率の上昇は営業費用比率を高め収益率を低下させる効果が見られた。これは外資合弁銀行が、経営近代化、新顧客開拓、新商品導入に努力しており、その結果、短期的には営業費用が上昇し利潤が低下したことを反映している。また、タイでは外資比率の上昇は金利スプレッドを拡大する効果が観察された。これは、外資合弁銀行が新商品導入や経営近代化に積極的に努力し、より収益性の高い資産運用を行っていることを反映している。フィリピンと比較すると、外資合弁銀行が新商品導入などに強いリーダーシップを発揮していること、に特徴がある。その理由として、タイでは経済の成長性を見込んで外国銀行が積極的に市場への浸透を努力していること、公社債市場の急拡大によって投資銀行業務が急成長したことが関係している。