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執筆者 | 野村 淳一 |
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発行年月 | 2001年 7月 |
No. | 2001-17 |
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本稿の目的は日本の家計消費への資産効果を検討し、韓国と台湾の結果と比較することである。韓国と台湾は文化的に日本に類似した点が多いので、この3国間で比較することにより、家計消費の決定要因のうち、文化的要因以外の要因に焦点をあてることが可能となると考えられる。特にこれらの3国では他国に比べて高い貯蓄率を経験しており、高貯蓄率の決定要因の研究として興味深い。韓国と台湾では家計の資産データとして『資金循環勘定表』、つまり金融資産しか利用できない。しかしながら、野村(1999)によれば家計消費に影響を与えるのは総資産というよりも金融資産であると考えられるので、この問題はさほど深刻ではないと考えられる。本稿の主要な結論は以下の通りである。(1)3国とも純キャピタルゲイン(ロス)の大きさはかなり大きいが、日本以外の国では家計部門でバブルが発生していたとまでは言えない、(2)消費関数ではキャピタルゲインを明示的に考慮したモデル、特にヒックス流の所得概念を用いたモデルが重要である、(3)Campbell(1987)の恒常所得仮説の共和分的含意は構造変化を考慮した共和分検定を用いれば、日本と韓国について成立している。