執筆者 | 本間 正義 |
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所 属 | アジア成長研究所 |
発行年月 | 2023年3月 |
No. | 2022-09 |
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本研究の目的は、日本および九州の農業の活性化のために求められている、農林水産物・食品の輸出の可能性を探り、特に、北九州空港からの航空貨物便による輸出を念頭におき、九州の農産物のアジア諸国・地域への輸出拡大の方向性を検討することにある。
まず、九州農業の日本における位置づけを統計的に明らかにし、他地域に比べ水稲の比重が低く畜産の比重が高いこと、九州からの農林水産品輸出では、水産物と林産物の割合が高いことが確認される。また、輸出にむけた体制作りをどのように行っているかを概観してから、アジア諸国・地域にむけた日本の農林水産物・食品の輸出の現状と推移および、各地域の市場としての特徴を明らかにする。
農産物の輸出振興は第二次安倍政権下で進められてきたが、どのような政策が施行され、今日どのように引き継がれているのかを見て、その延長にある九州での取り組みを紹介する。その上で、航空貨物による農産物輸出に焦点を当てその実態をあきらかにする。
新型コロナ前の航空便による農産物輸出の取り組みとして、沖縄那覇空港における国際物流ハブ機能を活用したアジアへの農水産物輸出を取り上げ検討する。沖縄県の「国際物流拠点形成」構想と全日空の「アジア主要都市を繋ぐ国際航空貨物ネットワークの構築」という戦略で、高品質・ハイスピード輸送を目指す沖縄貨物ハブに、さらに、ヤマト運輸との沖縄ハブを活用した国際クール宅急便のサービスが加わる。コロナ禍による国際便運休のため運用開始まもなく中止を余儀なくされたが、この取り組みは北九州空港の活用に大いに参考になる。
一方、農林水産物の航空貨物による輸出の実態調査が、国土交通政策研究所により行われている。これは特定の1日の調査にすぎないが、農林水産物が生産現地からどのような経路を経て、海外の目的地に輸送されているのかが明らかにされており、有益な情報を提供する。この調査結果から、北九州空港および福岡空港を経て輸出される農林水産物とその経路が解明されており、今後の北九州空港の活用方法の検討に有益である。
国内物流は、自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制(2024年問題)のため、陸上輸送に代わり航空輸送の重要性が高まるとみられている。そんな中、ヤマト運輸が日本航空と提携し貨物専用機を、2024年4月から運航することを決めた。北九州空港はそのための九州唯一のフレーター空港として選ばれた。首都圏と九州を結ぶだけでなく、将来的には全国各地の空港とネットワークで結び、農産物輸出においてもアジアへのゲートウェイとして機能することが期待される。そのための条件と解決すべき課題について最後に検討する。