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北九州市における構造変化に関する経済モデルの開発

執筆者 坂本 博
所 属 アジア成長研究所
発行年月 2023年2月
No. 2022-02
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内容紹介

本調査報告書は3章から成り立っている(全文坂本が執筆)。

第1章は,産業連関分析の拡張可能性について,3つの方向から考察した。1つは,様々な産業連関分析モデルを紹介し,経済効果の違いを逆行列から分析した。次に,特定部門の係数を動かすことによる経済効果の変動を分析した。さらに,この分析を拡張させて,産業連関分析における経済効果の変動可能性を,モンテカルロシミュレーションを通じて分析した。北九州市の産業連関表を用いた分析の結果,いくつかのモデルにおいて,経済効果がマイナスになる可能性が生じることが判明した。これは,北九州市の経済が市内で完結しておらず,移輸入を必要としているからである。変動可能性については,投入係数のみの実験としたので,モデルが複雑になるほど,変動可能性が小さくなることが分かった。また,本章では,北九州市の物流拠点の発展を勘案した個別分析を行っているが,適度な経済効果が見られることも分かった。

第2章は,『県民経済計算』の経済活動別県内総生産および要素所得のデータを用いて,日本の都道府県格差を,付加価値構造から分解し,その傾向を分析した。データによると,要素所得は,産出額,中間投入,県内総生産(GRDP),固定資本減耗,県内純生産,税-補助金,県内要素所得,県内雇用者報酬,営業余剰と分類される。そこで,分析において,産出額格差を中間投入,県内総生産に分解し,県内総生産格差を固定資本減耗,税-補助金,県内要素所得に分解し,県内要素所得格差を県内雇用者報酬,営業余剰に分解する多重構造とした。簡単な結果として,縮小傾向にある日本の都道府県格差において,県内要素所得格差の占める割合が高いことが分かった。

第3章は,第2章と同様のデータから,九州を中心に県別および産業別に時系列の傾向を分析した。地域別,産業別に違いが見られるが,県内総生産の比率が概ね減少傾向にあり,日本経済における九州経済の地位,特に,北九州市経済の地位が低下していることが分かった。また,固定資本減耗の比率が概ね上昇傾向にあることも分かった。