執筆者 | 田代 智治 |
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所 属 | アジア成長研究所 |
発行年月 | 2020年3月 |
No. | 2019-09 |
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「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」とは,2015年9月の国連持続可能な国際サミットで全会一致1で採択された「我々の世界を変革する持続可能な開発のための2030アジェンダ(行動計画)」の中核をなす世界的開発目標である。社会変革に向けて高邁な理想を掲げたグローバルスケールの行動規範であり,その内容を特徴づけるものとして「新たな人権宣言」,「新たな社会契約」等の理念が国連の主要文書等に示されている(村上,2019,p.6)。またその理念は,①包摂性(誰一人取り残さない),②普遍性(途上国,先進国も同様に),③多様性(国,自治体,企業,コミュニティまで),④統合性(経済・社会・環境の統合性),⑤行動性(進捗管理の徹底),といったキーワードで表現することができる(村上,2019,p.6)。具体的には,17のゴールと,それぞれのゴールの下に合計169のターゲットが掲げられ,232のインディケーター(評価指標)が設定されている。これを受けて,日本では内閣官房に推進本部が設置され(本部長:内閣総理大臣),関係省庁の連携及び政府,地方自治体の協力関係の下で,官民一体による推進が積極的に図られている。
SDGsでは,過去のMDGs策定の際の経験と反省を踏まえ,国家レベルのみならず公民のあらゆるレベル2での取り組みの重要性が謳われており,そのような意味からも自治体レベルにおける取り組みが大いに期待される(自治体SDGsガイドライン検討委員会,2018,pp.6~7)。実際に,国連の各加盟国やその自治体などに対して,2030年にむけてSDGsにおけるそれぞれのゴールを目指した総合的な取り組みを具体的に実施することが強く求められている。しかしながら一方で,SDGsの実行段階における障害として,①多すぎる目標,②理解が容易でない,導入方法がわからない,③法的拘束力がない,指標のためのデータの未整備,などの問題点が指摘されている(村上,2019,p.)。
本調査研究の委託元である北九州市は,過去の公害克服の経験を含め国内外から様々な評価を受けているなど,SDGs関連分野において日本を代表する自治体である3。そのため北九州市には,SDGsへの更なる先進的取り組みによって,他自治体を牽引する役割が期待されている。以上の背景から,本調査研究では国内主要都市におけるSDGsへの取り組み調査及び成功事例を含めた企業の取り組み状況を調査し,北九州市が取り組むべき事項について検討し,提言を行うことを目的とする。