刊行物
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執筆者 | 八田 達夫 |
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所 属 | アジア成長研究所 |
発行年月 | 2016年3月 |
No. | 2015-01 |
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政府は2014年以来、成長戦略の目標として出生率の上昇を掲げ、そのための手段として、若者の東京圏からの地方への移転を促す政策を始めた。その具体的な手段は、地方に対する補助金政策である。これは、選挙対策であり、地方へのバラマキにもっともらしい理由をつけたものに過ぎないのだから、目くじらを立てるほどのことではない、という考え方も確かにできる。しかし、この政策を全面的に掲げたことによって、地方創生のために決定的に重要な改革が置き去りにされようとしている。
本稿の目的は、地方創生のために長期的に役立つ改革案ーー「国保の"モデル給付額"国庫負担制度」ーーを提示することにある。さらに、この改革案の必要性は、国と地方自治体との役割分担の理由と深く関わっていることを指摘しよう。
本稿では、まず、「人口分散による出生率が成長戦略になる」という政府の主張が間違っていることを、データによって示す。次に、地方が高齢者サービスに比較優位を持っていることを示す。さらに、地方が比較優位を持つこの産業を活性化出来ていない根本理由が、国民健康保険制度にあることを示したうえで、その改革案を提示する。
国保や介護の制度が地方自治体に大きな財政負担を与えていることについては、鈴木(2015),林(2015),岩本(2015)を参照されたい。なお、本稿は、八田(2015a)を修正のうえ、大幅に加筆したものである。