執筆者 | 藤原 利久 |
---|---|
所 属 | アジア成長研究所 |
発行年月 | 2015年3月 |
No. | 2014-08 |
ダウンロード | 3172KB |
本研究は,日中韓においてEUや国内と同様にフェリー・Ro-Ro船(以降高速船と称す)によるシームレス物流の拡大により大幅な物流や生産・サービスの改善や将来,イノベーションに繋がる改革の実現を提案するものである。
国際間の物流方法としては,航空・高速船・コンテナ船がある。高速船は物流コスト・リードタイム等が航空とコンテナ船の中間の輸送機関であるが,国際間を積み替えなしに両国間の道路をシームレスに通行することにより大幅な物流等の改善が出来る特長がある。即ち,国際間をシームレス物流により効率的に且つ高度なSCM(Supply Chain Management)を構築して,物流コスト・リードタイムや生産を大幅に改善できる。
EUでは,共通運輸政策による規制緩和により物流や貿易など国内同様のシームレス物流が行われ,近海物流(日中韓の物流に相当する)の50%以上(日中間は4%程度)が高速船物流である。黒海・アフリカ・北欧などにも拡大し国際高速船が「Motorways of the Sea(海のハイウエイ)」と言われる。ヨーロッパの大量輸送方式と日本のSCM物流を合わせた完全シームレスSCM物流が目標である。
金沢港では自走建機等を韓国馬山港経由のシームレス物流により世界に輸出をしており,更に,日産九州では自動車部品の輸入において日本車や日韓ダブルナンバー車による通行規制緩和等により完全シームレスSCM物流を実現した。物流だけでなく調達・生産む含む総合改革(40%コスト削減,在庫25日が3日等)が実現し,貨物量は円安にも関わらず拡大している。
しかしながら,韓中間で協定されたシームレス物流は輸送毎の検査費や保険費等の規制の為に貨物量は全く不調である。日中間では一部日本車によるシームレス物流は規制が韓中ほどでなくトライヤルの成果を上げつつある。
日中韓の国際高速船航路は非常に便数が多く活況を呈している。貨物量の多い対中国が重要であり韓国保税輸送を利用した日中貿易も拡大しつつある。日中間貿易に韓中間の既存週36便もの高速船の活用及び日中・韓中シームレス物流の進展を合わせれば1日1便のSCM物流も可能になる。3ルートを合わせた「日中韓環黄海シームレス物流」を提案するものである。
日中韓物流大臣会合が2年ごとに行われシームレス物流に関する議論がされている。3国間の交通・貿易の規制緩和によるシームレス物流の早期実現を図るべきである。シームレス物流により貿易や経済が拡大し日中韓がWin‐Winの大きな発展をすることを理解すべきである。