Author | Yoshihiro Kameyama |
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Date of Publication | 2006. 7 |
No. | 2006-09 |
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1990年代の後半以降,産業クラスターの形成が国際的な潮流となっており,日本においても地域発展の源泉として期待が懸けられている。クラスター戦略は,「学」の機能を明確に取り込んでいる点で画期的であるが,産学官連携を推進していくためには,産学官ともに限りある資源(財源)を効率的に投資していくことが望ましい。その戦略の考案のためには,判断基準になる理論(概念上の枠組み)が必要である。本稿では,北部九州と長野県のIT産業集積地域を取り上げて,地域連携(企業間連携や産学官連携)の視点から,その動向を検討して政策的含意を提示する。北部九州と長野県の「ものづくり」は,鉄鋼業と製糸業という伝統的産業に端を発している。近年,北部九州はIT産業や自動車産業に活路を見出そうと模索しており,長野県は精密機械から脱皮して,一般機械と電気機械(近年はIT関連)の産業集積を形成している。各地域の製造業に占める機械金属工業の比率を見ることで,地域の加工技術の広がりを確認できる。北部九州と比べると,長野県(特に,岡谷市・諏訪市)では,その比率が高く,国内有数の産業集積である大田区と同等である。アンケート調査によって,企業の連携行動を統計的に分析したところ,北部九州(特に,北九州市)では産学連携が相対的に高くなっており,長野県では企業間連携が相対的に高くなっていた。政策的含意としては,北部九州のIT産業では,産学官連携と合わせて企業間連携を強化していく必要があり,中小企業間の情報交換や技術交流を促進していくことで,個々の企業で技術の差別化が可能となり競争力が強化される。長野県のIT産業では,企業間連携にもとづき産学官連携を強化していく必要があり,大学・研究開発機関をはじめとする地域の研究開発拠点を増強していくことで,新領域の技術・製品の開発が可能となり競争力が強化される。