Author | Hidehiko Tanimura, Atsushi Toshimori, Hidetoshi Yoshimura |
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Date of Publication | 2005. 11 |
No. | 2005-22 |
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新北九州空港は,国際物流拠点を標榜する北九州市にとって,地域経済の浮揚を図る起爆剤として大いに期待されている。2005年4月に一部開港する響灘新コンテナ港湾や現在建設中の東九州自動車道,JR在来線と連結し,複合一貫輸送が可能になるならば,北九州市の物流拠点としての優位性を確実に高めるものと思われる。
航空貨物の輸送量は世界的に見ても一貫して増加の傾向にあり,アジア諸国,とくに成長著しいマーケットと生産拠点機能を有する中国と地理的に近く,半導体やデジカメなどの電子部品・製品をはじめとする高付加価値型産業が集積する北部九州圏における国際航空貨物に対する需要は今後とも増大すると予想される。一方,首都圏への翌日配達を可能にする超速宅配便といった航空貨物商品が開発され,大型トラックのスピード規制や地球環境問題に配慮したモーダルシフトが推進されるなど,国内航空貨物についても同様に増加するものと予想される。
本研究は,まず,このような状況を研究の背景として整理し,次に,多くの輸送手段のなかから航空機を輸送手段として選択する際の決定要因を輸送品目,仕向け地別に調査分析し,新北九州空港に対する航空貨物需要を掘り起こすための基礎的知見を得ようとするものである。すなわち,北部九州圏において航空貨物業務に携わっている専門家を対象としてAHP(階層分析法:Analytic Hierarchy Process)による調査を実施して,航空貨物を北部九州から首都圏,アジア圏,北米圏へ移送するときの輸送手段選択の判断基準を半導体および電子機器,精密機械,生鮮食料品,衣類,書類等の5種類を選択し,品目別に分析した。なお,判断の基準としては,輸送運賃,運送時間,荷痛み,手続きの簡略さの4要因をとりあげ,さらに可能な輸送手段としては,航空便と船便とし,国内輸送の場合は,トラック便と鉄道便を追加した。
分析の結果から,その判断基準とそれから予想される輸送手段選択行動を検討することによって,今後の航空貨物政策への含意を導いた。すなわち,北部九州圏における航空貨物需要を伸ばし,高付加価値産業の育成に資するためには,国内においては首都圏を翌日流通圏に取り込むための深夜便を活用する輸送システムの整備,国際的にはトラックによるハブ空港への横持ちによる時間のロスをなくすような直行便による貨物ネットワークの整備などが喫緊の課題であることが示唆された。