PUBLICATIONS & REPORTS
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Author | Susumu Hondai |
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Date of Publication | 2004. 12 |
No. | 2004-37 |
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所得分布の計測には、個々の世帯が受け取る所得の分布やその格差を問題にする人的分配(personal distribution)と、生産の成果が労働、土地、資本など諸生産要素にいかに配分されるかを問題にする機能的分配(functional distribution)とがある。本稿では後者の問題をインドネシア製造業と農業について、1975年以降のデータを利用して分析した。長期的なトレンドとしては、付加価値のうち労働に分配される割合(労働分配率)が減少している。こうした現象が生じる可能性として、①特に製造業における労働節約的技術の導入、②資本蓄積の影響、③農業部門における過剰就業労働力の存在、を検討した。その結果、特に製造業において1990年代に生産がより資本集約的となったことが判明した。これにより、生産が拡大しても労働力雇用が伸びず、分配率が低下した可能性がある。資本蓄積の影響も、部分的にしか解明されていないが、業種によっては労働分配率を低下させる作用をしたと考えられる。農業における過剰就業労働力の散在も賃金率の上昇を抑え、生産が拡大すると共に土地及び資本への帰属分が拡大し、労働への分配率が低下させるよう作用した。こうした現象は日本の経済発展過程においても観察されているもので、農業に過剰就業が無くならない限り、分配率上昇をみることができないものと考えられる。資本蓄積の影響に関連して、早急な最低賃金法などの導入により、賃金率が相対的に上昇した影響の可能性もある。