Author | 小松 翔 |
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Affiliation | Asian Growth Research Institute |
Date of Publication | 2024.3 |
No. | 2023-07 |
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日本では急速な少子高齢化に対応すべく、地方創生の取組が推進されてきたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、地方の経済・社会は大きな影響を受けた。他方、コロナ禍でデジタル・オンラインの活用が進展した。デジタル社会のビジョン実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体の役割は極めて重要であり、自治体DXを推進する意義は大きい(総務省、2023)。こうした中、「⾃治体DX・情報化推進概要」が公表され、各自治体のDXの進展状況を把握できるようになったが、同データを用いた自治体DXの実証研究は一部を除き行われていない。DXが地方創生に寄与することが期待されているが、その効果を定量的に明らかにした研究も見当たらない。そこで、本研究は、自治体DXが地方創生に与える影響、およびそのメカニズムを定量的に明らかにすることを目的とし、実証分析を行う。地方創生は人口動態、経済パフォーマンス、およびデジタル田園都市国家構想の重要業績評価指標等の観点から測定する。主な分析結果は以下の通りである。自治体の人口規模別の分析では、自治体DX(DXを推進するための全体⽅針の策定状況)は小規模自治体において統計的有意な効果を有していない。 他方、中規模自治体では自治体DXが婚姻率に、大規模自治体では自治体DXが人口の社会増減率、および納税者1人あたり課税対象所得にそれぞれ統計的有意な正の効果を有することが示された。自治体の人口規模によって自治体DXが地方創生に与える効果に異質性があり、中規模以上の自治体でその効果が大きいことが明らかになった。メカニズムの分析では、AIとRPAの導入が進展すると、自治体におけるサテライトオフィス開設数が増加することが示された。