令和4年7月1日付けで、公益財団法人アジア成長研究所の所長を拝命いたしました。
当研究所は平成元年(1989年)9月、アメリカのペンシルベニア大学との共同研究施設として、前身である『財団法人国際東アジア研究センター』が設立されました。それ以来33年間、北九州市、日本及びアジアの経済・社会問題を調査・研究し、同時に、これら地域のための政策提言を続けて参りました。
アカデミックな学術研究機関としての貢献では、世界に対する経済学の知的発信機関として九州では最も注目された役割を果たしてきました。さらに、全国の大学に研究者を輩出してきましたし、九州大学(大学院アジア経済関連講座)および北九州市立大学(博士課程国際開発政策分野)の教育も担ってまいりました。これまで培ってきた国内外の大学、研究機関、研究者等とのネットワークを活用し、アジアに関する研究をさらに推進するとともに、地元社会(産業界・行政・市民)のアジアに対する相互理解の促進や地元大学等との連携による高水準の人材育成を目指します。
また、当研究所は昨年度始まった新たな中期計画で「地元貢献を重視した日本を代表するアジアの研究機関」と明記し、シンクタンクの機能を一層強化しています。そのシンクタンクとしての貢献では、北九州市の主要プロジェクトの実現に向けて学術的側面からの支援やアジア関連政策の推進に向けた調査研究、地元経済団体・企業との連携による産業経済振興策への提言を行って参ります。
今、世界は大変厳しい局面を迎えています。一方で、少子高齢化、経済成長の停滞、気候温暖化による環境変化、感染症の流行など、世界が協力して取り組むべき重大な問題は厳しさを増しています。同時に、地域紛争や大国間の対立など憂慮すべき摩擦や衝突が増加傾向にあり、アジアの経済成長と持続的発展に新たな困難と多くの不確定要素をもたらしています。しかし、このようにグローバルな課題が山積している時期こそ、当研究所の役割がより大きく期待されていると考えています。
この時期に、外国出身の私が所長の重責を担うことになったのも何かの縁ではないかと存じます。私はよりグローバルな視点に立ち、この激動期におけるタイムリーな研究成果と政策示唆を、当研究所から地元北九州市、そしてアジア・世界へ発信できるよう努めて参りたいと思っております。
公益財団法人アジア成長研究所
所長 戴 二彪