公益財団法人アジア成長研究所(AGI)は、東アジアの経済・社会に関する調査研究を行うことを目的に、北九州市、福岡県、及び経団連など財界の支援を得て、平成元年9月1日に設立された国際東アジア研究センター(ICSEAD)がその前身で、平成26年10月1日に現在の名称に改称しました。
国際社会に貢献すると共に、学術交流を促進して、東アジアの人的ネットワークの結節点になることを通じて北部九州の地域社会に貢献することが期待されています。現在10人の博士研究者を有し、研究者の国籍は、アメリカ、中国、ベトナムに及びます。日本人研究者も英語はもとより、アジア諸語に堪能です。アジア諸国から多くの研究者が絶えず訪問しています。
北九州市は、鉄道時代には九州の玄関口でしたが、航空機時代になって以来、優れた空港を持つ福岡市が九州の玄関口になりました。このため大企業は支店を、北九州ではなく福岡市に立地するようになったのです。
しかし、近年大型機も24時間発着可能な空港が北九州市に開港しました。滑走路を拡張すれば、欧州やアメリカからの乗り入れも可能です。これによって北九州は、この不利を克服できる出発点に立てるようになりました。
しかも、北九州は、飛躍的発展の原動力を抱えています。それはアジアとの人的・物的な近接性です。北九州は、日本でも最悪の産業公害を克服した経験をもとにその環境の取り組みを、JICA九州研修センターに来訪されたアジア新興国の公務員に対して30年以上にわたって教育してきました。そこで培われた人材ネットワークは、北九州の貴重な資産です。
次に、北九州に立地する大企業は、韓国の街を走ったトラックの車台をその上に乗せたコンテナーごとそのまま日本の街に走らせるシームレス物流によって、韓国から極めて安価に部品を調達し始めました。この方式は、他の東アジア諸国にも広げられていくでしょう。その上、北九州空港は、アジアとの貨物輸送の可能性を切り拓く24時間対応です。
さらには、アジアの爆発的発展の以前から、当研究所を設立し、域内で活発なアジア研究を続け、アジアの社会科学研究者達と人的ネットワークを築いてきました。アジアとのこの近接性は、アジアの時代になった今、北九州の発展の起爆剤になりつつあります。
この状況において、AGIは、次の役割を果たすことによって直接間接に北部九州に大きく貢献できると考えています。
もはや欧米のみから制度改革の先例を学ぶ時代ではありません。アジアを単に貿易相手国とみなしていた時代とは異なるアジアとの関わり方が必要です。
アジア成長研究所は、上記のような役割を果たすことによって、多くのアジアの研究機関や政府機関が当研究所の活動に一層注目するようになり、ネットワークを強化できるでしょう。
公益財団法人アジア成長研究所
理事長 八田 達夫