第10回成長戦略フォーラム
2015年3月24日(火)14:00~16:00
於:ステーションホテル小倉 4階豊饒の間
講師:小松 正之 アジア成長研究所 客員主席研究員
テーマ「地方創生と水産業の改革」
今回の成長戦略フォーラムでは、アジア成長研究所客員主席研究員の小松正之氏を講師にお迎えし、水産業の現状と、今後取り組むべき課題についてお話して頂きました。
現在の水産業は、中国を筆頭に世界的に漁業・養殖生産量は増えているが、日本の漁業は衰退の一方。小松氏は漁獲量減少だけでなく、漁業後継者・漁業の盛んな島の人口の激減などに触れ、これらは早急に対応しなければならない国家問題であると指摘。このフォーラムでは、本質的な面で魚をどのように管理すればいいかを中心に語っていただきました。
日本の水産業に関する法律は、水産業漁業法と水産業協同組合法があり、法律を作った当時は機能していたが、時代の移り変わりに合わなくなってきているが、水産資源を守りつつ、漁業従事者にメリットのある制度の例として、小松氏は各国の取り組みや制度を紹介しました。
『TAC制度』は魚種ごとに科学的に資源回復が可能なレベルで全体の漁獲量を定めることにより、資源を管理する制度。TACを基に各漁船や個人ごとに漁獲量を決めて割り振るのが『IQ制度』で、早い者勝ちの漁獲の抑制になります。急いで多くの量を確保する必要がないため、船の大きさや数も無駄に増やす必要がなく、経費削減にもつながる。漁獲時期も偏らないので、価格の高い時期に効率よく販売できるなど、多くのメリットがあります。IQ制度の割り当ての譲渡を可能とする『ITQ制度』などもあり、アメリカ・アイスランド・ノルウェー・デンマーク等がこれらを採用し、資源管理と漁業の効率化を成功させています。
小松氏は日本でもこの制度の採用が必要だと考え、新潟県で日本初のIQ制度を導入。まずは近海で管理しやすい甘えびで実施したところ、経費削減や漁獲の通年化を実現しています。また、今後の調査が必要だが、資源回復も期待されるとのことです。
さらに、個人経営が多い漁業界において後継者が入りやすいように法人化や合併を進めている等、精力的に漁業の改革に尽力しています。
このように地方の創生と水産業の改革には国として漁業法の改革が必要だが、このような対策はアベノミクスの政策に入っておらず、なかなか実現に結びつかないのが現状。小松氏には、今後も日本の水産業発展に向けて取り組んでいただき、明るい将来へ導いていただきたいと思います。
質疑応答ではたくさんの質問が挙がり、「北九州の漁業発展、漁業の六次産業化には何が必要か」との質問に小松氏は、「まずはデータを取り、現状を把握することが大切。それを基に県に持ちかけてみるのはどうか。また、六次産業化は漁師だけでなく、漁協や県や他の力も借りて、組合や会社として起こすべきである。是非実行してみてください。」とのアドバイスで北九州にエールを送り、フォーラムを締めくくりました。
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更新日:2015年5月18日
カテゴリ:セミナー