当センター(ICSEAD=イクシアード、10月1日からアジア成長研究所=AGI=に改称))は2013年7月から新聞、テレビ、ラジオ、電子媒体など北九州で活動するメディアとの交流会「イクシアードとメディアの会」(略称イクメ会)を、原則として月1回開いています。私どもの活動内容を地元メディアの皆さまにご認識いただき、広く地域社会にお伝えいただく一助とするとともに、意見交換を通じて地域社会の最新の情報ニーズを把握し、今後の活動に役立てるためです。
第13回「イクシアードとメディアの会」(略称イクメ会)
2014.9.24(水)19:00~20:30@ICSEAD会議室(北九州市・大手町のムーブ6階)
話題提供者:江本伸哉協力研究員(九州国際大学経済学部特任教授)「北部九州自動車産業の強みと泣き所」
出席メディア:時事通信社、TVQ九州放送、毎日新聞社、読売新聞社(=五十音順)
北部九州(福岡、大分県)には近年、日産自動車九州、トヨタ自動車九州、ダイハツ九州の完成車メーカー3社が集積しました。江本研究員は①かつての鉄鋼に代わり、自動車が北部九州の基幹産業に育ったのはなぜか②官民でどんな努力があったのか③中・韓・ASEANなど新興自動車国の台頭にどう対処するか④電子化、電動化、自動化への備えは十分か⑤明日の北部九州を支える屋台骨たりうるか――についてデータや関係者の証言に基づいて解説しました。
<①②>自動車が福岡県の工業出荷額の31%(2012年)、大分県の14%(同)を占める最大の産業に育ったのは、日産(1975年)、トヨタ(1992年)、ダイハツ(2004年)の民間3社が豊富な労働力(工員)を求めて北部九州に進出したからであり、福岡県など官が果たした役割は「100万台構想」「150万台構想」などスローガンづくり以外は「特筆すべき貢献はなかった」(メーカー幹部)と指摘しました。
説明する江本伸哉協力研究員
<③④⑤>日本の人口減、メーカーの海外生産シフトに伴い、今後は海外工場との生産性競争だけでなく、国内工場との生存競争(ゼロサム、マイナスサム競争)が激化すること、今後、駆動源がいかに変化しても、自動車の基本構造は変わらず、高い生産性と良質の労働力(工業高校生数は東京に次いで全国2位)を維持する限り、国内のアッセンブル(組み立て)拠点としての地位は揺るがないだろう(部品がどう変わろうと、それを組み立付ける作業は必要で、その作業を担う優秀な工員の養成を怠らない限り、自動車産業が北部九州経済を支え続けるだろう)と説明しました。
【主な質疑応答】
Q「ここに来て北部九州の自動車生産台数が落ちているが、出荷金額も落ちているのか?レクサスなど高級車の生産比率が高まれば、台数が落ちても金額は増える可能性もあるが」
A「数字は把握していないが、安価な海外部品の調達増もあり、金額も落ちているのではないか」
Q「トヨタの宮若工場には工場増設の余地がないと思われるが…」
A「宮若の敷地は一杯だが、苅田町のエンジン工場内やその周辺には余裕がある。いい港もある」
Q「各自動車メーカーはBCP(事業継続)のために九州での生産を増やしたということか?」
A「日産の苅田進出やトヨタの宮若進出の時点ではBCPより雇用確保が狙いだった。しかし、トヨタの苅田進出は雇用に加えて、三河地区の大震災・津波リスクを大いに意識したと聞いている」
Q「北部九州の工員たちが厳しい労働に耐える勤勉なDNAを持っているという根拠は」
A「北部九州には炭鉱、製鉄所に代表される重筋労働に従事してきた歴史がある。製鉄所関連のある有力経営者は生前、『北九州地区の労働者にはみんなで力を合わせて働く“協業”の精神が根づいている』として教えてくれた。屈強で辛抱強い労働者気質は確かにこの地の強みだと思う」
(協力研究員・江本伸哉)
更新日:2014年10月6日
カテゴリ:研究交流